市営住宅で無事にリフォームの許可が下り、快適な空間を手に入れた。しかし、そこで安心してはいけません。忘れてはならないのが、退去する際に発生する「原状回復義務」の問題です。原状回復義務とは、簡単に言えば「退去する際には、部屋を入居した時と同じ状態に戻して返還しなければならない」というルールです。これは、一般的な賃貸住宅だけでなく、市営住宅にも適用されます。つまり、たとえ自治体の許可を得て、全額自己負担でフローリングに張り替えたとしても、原則としては、退去時にはそれを剥がし、元の畳の状態に戻さなければならない、ということなのです。壁紙の張り替えや、手すりの設置なども同様です。このルールを知らずにリフォームを行ってしまうと、退去時に思わぬ高額な原状回復費用を請求され、トラブルになる可能性があります。しかし、この原状回復義務には、いくつかの「免除されるケース」が存在します。どのような場合に免除される可能性があるのでしょうか。一つ目は、そのリフォームが「次の入居者にとっても有益である」と、自治体が判断した場合です。例えば、高齢化社会に対応するための手すりの設置や、和式トイレから洋式トイレへの変更などは、次の入居者もそのまま使える可能性が高いため、原状回復が免除されることがあります。二つ目は、そもそも自治体負担で行われた「設備の更新」です。老朽化により自治体の費用で風呂釜が新しいものに交換された場合などは、当然、元に戻す必要はありません。そして三つ目が、リフォームの申請時に、あらかじめ「原状回復の免除」についても承認を得ておくケースです。リフォームの内容によっては、申請段階で「これは退去時にそのままで良いですよ」という許可を得られる場合があります。トラブルを避けるために最も重要なのは、リフォームの申請を行う際に、「退去時の原状回復は必要ですか?」と、書面で確認しておくことです。許可証にその旨を一筆加えてもらうなど、後々「言った、言わない」にならないように、明確な証拠を残しておくことが、安心してリフォームを行うための最大の防御策となります。
市営住宅リフォーム後の原状回復義務と免除されるケース