網戸に防犯性能を求める動きが強まる中で、ステンレス網戸はその堅牢さから注目を集めていますが、その安心感を得るために犠牲にしなければならない要素があることを忘れてはなりません。ステンレス網戸の最大の売りは、ナイフでも簡単には切れないその強度です。しかし、この「切れない」という特性が、緊急時にはリスクに変わる可能性があります。例えば、火災などの緊急事態で窓から脱出しなければならない際、通常の網戸であれば体当たりや身近な道具で破ることができますが、ステンレス網戸は文字通り壁となって立ちはだかります。室内に閉じ込められるリスクを考慮すると、すべての窓をステンレスにするのは安全管理の観点から疑問が残ります。また、防犯性を高めるために網のワイヤーを太くし、枠との固定をより強固にした製品は、もはや「網戸」というよりは「可動式の格子」に近い存在となります。そうなると、網戸本来の目的である「風通しの良さ」は大幅に損なわれます。ワイヤーの太さが風の通り道を塞ぎ、室内への空気の流入量が目に見えて減少するからです。特に風の弱い日には、その差を顕著に感じるでしょう。コスト面でも、単なる張替えではなく、防犯機能を備えた専用のステンレス網戸システムとして導入する場合、通常の張替えの数十倍の費用がかかることもあります。窓一つをカバーするだけで数万円から十数万円という投資は、住宅設備全体の予算配分を大きく歪めることになりかねません。さらに、その重厚な見た目は、住宅の外観デザインにも影響を与えます。繊細なアルミサッシに無骨なステンレス網が組み合わさることで、どこか閉鎖的で重苦しい印象を周囲に与えてしまうかもしれません。心理的な安心感は重要ですが、それが毎日の生活の軽快さや、窓からの心地よい眺望、さらには家全体の通気環境を損なうことになっては、本末転倒と言わざるを得ません。防犯は、鍵の強化や補助錠、防犯ガラスなど他の手段と組み合わせて考えるべきであり、網戸という「通気のための設備」にすべての役割を押し付けることには限界があります。ステンレス網戸を選ぶ際は、その強さが生む「不自由さ」をどこまで許容できるか、家族で十分に話し合う必要があります。一生モノの買い物になるからこそ、一時の不安に駆られて決めるのではなく、十年、二十年と使い続ける中での利便性を冷静に見極める眼差しが求められます。
防犯性能と引き換えに失うステンレス網戸の軽快さとコスト