ステンレス網戸を検討する際、よく言われるのが「初期費用は高いが、張り替える必要がないので長期的にはお得である」という理論です。しかし、この経済的合理性には、いくつかの前提条件があり、それが崩れると大きな誤算が生じます。まず、住宅そのものの寿命と網戸の寿命のバランスです。ステンレス網戸が二十年以上持つとしても、その間にサッシ枠や建物の構造自体が歪んだり、リフォームが必要になったりすれば、網戸だけを再利用することは困難です。現代の住宅設備は、一定のサイクルで更新されることを前提に設計されています。その中で、網戸だけを突出して長寿命にすることに、どれほどの金銭的メリットがあるかは疑問が残ります。また、生活スタイルの変化という不確定要素もあります。例えば、現在は防犯やペット対策でステンレスが必要だと感じていても、十年後にはその必要性が薄れ、もっと視認性が良く風通しの良い網戸に変えたいと思うかもしれません。その際、高価なステンレス網戸を導入していると、心理的な抵抗感から新しい選択肢への変更を躊躇してしまう「サンクコストの罠」に陥りやすくなります。さらに、災害時のリスクも無視できません。地震や台風などで枠に強い衝撃が加わり、ステンレス網が歪んでしまった場合、その修復には通常の網戸の数倍の費用がかかります。せっかく高いお金を払って導入しても、不測の事態で短期間のうちに交換が必要になれば、経済的なメリットは一瞬で消え去ります。また、住宅の売却を検討する場合、ステンレス網戸のような特殊な設備は、必ずしも査定にプラスに働くとは限りません。むしろ、メンテナンスの難しさや見た目の無骨さを敬遠する買い手もいるため、汎用性の高い標準的な設備の方が好まれることもあります。さらに、日々の生活における「目に見えないコスト」も考慮すべきです。視界が遮られることによるストレスや、掃除のしにくさによる時間のロス、反射光による近隣への配慮など、これらはすべて金額に換算することは難しいですが、確実に生活の質に影響を与えます。
長期的な視点で考えるステンレス網戸の経済性と導入の壁