長年、数多くの現場で壁紙を張り替えてきたベテランの内装職人の視点から見ると、お客様が抱く費用のイメージと、実際の現場での苦労の間には時折ギャップがあると感じることがあります。多くのお客様は、カタログに載っている壁紙の価格が費用の大半だと思われがちですが、実のところ、私たちが最も時間をかけ、技術を注ぎ込んでいるのは目に見えなくなる下地の処理なのです。古い壁紙を剥がしてみると、石膏ボードが痛んでいたり、カビが発生していたり、以前のパテが浮き上がっていたりすることがよくあります。これらを放置して新しい紙を貼っても、数ヶ月で空気が入ったり、下地の形が浮き出てきたりしてしまいます。そのため、リフォーム費用に含まれるパテ処理代や下地調整費というのは、壁紙を十年、十五年と持たせるための保険のようなものだと考えていただければ幸いです。また、最近はネット通販などで安く壁紙を購入して、持ち込みで貼ってほしいというご相談も増えましたが、実は持ち込みの場合は施工料金を割増しにさせていただくことがあります。なぜなら、私たちが普段使っている材料は、糊のノリや紙の伸び率、切りやすさが熟知できているものですが、未知の素材は扱いにくく、失敗のリスクや作業時間の延長に繋がるからです。結局のところ、材料費を浮かせるよりも、プロが推奨する扱いやすい高品質な材料を一括で任せていただく方が、作業がスムーズに進み、結果として工賃を含めた総額を安く抑えられるケースが多いのです。さらに、費用の算出において「空き家」か「居住中」かという点も大きな分かれ目になります。家具が何もない状態であれば、養生の手間も省け、脚立の移動も自由自在に行えるため、非常に効率よく仕事が進みます。一方で、生活されているお部屋での作業は、ホコリが立たないように細心の注意を払い、毎日作業後に清掃を行う必要があります。こうした見えないサービスも、諸経費という形で費用に反映されています。私たち職人は、単に壁に紙を貼るだけでなく、その部屋でのこれからの暮らしを想像しながら仕事をしています。提示された見積もりが少し高く感じたときは、ぜひその内訳について尋ねてみてください。誠実な職人であれば、どこに手間がかかり、どこで質を担保しようとしているのかを丁寧に説明してくれるはずです。適正な費用をかけることは、結局のところ、長持ちする美しい部屋を手に入れるための近道なのです。
内装職人に聞く壁紙リフォーム費用の決まり方