長年、現場で様々な種類の網戸を扱ってきた職人の立場から申し上げますと、ステンレス網戸は確かに「究極の網戸」の一つではありますが、手放しでお勧めできるものではありません。お客様から「ステンレスにすれば一生張り替えなくて済むのでしょう?」という質問をよく受けますが、実際にはステンレス製特有の維持管理の難しさがあります。まず、網戸自体の寿命よりも先にサッシ枠や戸車が悲鳴を上げることが多いという事実です。ステンレス網は非常に重いため、開閉のたびにサッシに大きな負担をかけます。特に築年数の経過した家の場合、重いステンレス網戸を支えきれず、レールが摩耗したり、枠が歪んで隙間ができたりすることがあります。網は破れなくても、網戸としての機能が果たせなくなれば本末転倒です。また、メンテナンスについても、皆さんが想像されているほど楽ではありません。確かに錆びには強いですが、排気ガスや潮風に含まれる塩分、そして空気中の埃が網目に蓄積するのは他の素材と同じです。むしろ、ステンレスの硬い網目は汚れを「噛み込む」性質があり、一度網目に入り込んだ微細な汚れを落とすのは一苦労です。樹脂製の網であれば、網をしならせて裏側から汚れを叩き出すことができますが、ステンレスは動かないため、高圧洗浄機や専用のブラシを使わなければ奥の汚れが取れません。しかも、不用意に力を入れると網が枠から外れてしまうことがあり、ステンレス網を一度外れた枠に再度収めるのは、私たちプロでも非常に困難な作業となります。さらに、現場で最も困るのは「網の緩み」です。ステンレスは温度変化によって僅かに伸縮しますが、金属ゆえに遊びがありません。真夏の酷暑や真冬の極寒を繰り返すうちに、枠を固定しているゴムが劣化したり、網自体が僅かに伸びたりして、不快なビビリ音が発生することがあります。風が吹くたびに「カタカタ」「キンキン」という金属音が窓辺で鳴り続けるのは、想像以上にストレスが溜まるものです。また、万が一網が破れたり、大きな凹みができたりした場合、部分的な補修は不可能です。一枚まるごと交換するしかありませんが、前述の通り施工費が高額なため、結果的に維持費が跳ね上がることになります。私たちがステンレスをお勧めするのは、例えば防犯性を極限まで高めたい場合や、大型犬が網戸を突き破るのを防ぎたいといった特殊なケースに限られます。通常の一般家庭であれば、近年の進化したポリエステル系やグラスファイバー製の網の方が、軽快で視認性も良く、コストパフォーマンスに優れているのが現実です。